ギタリストの日常

ギタリスト、スタジオミュージシャンとして活動し、レコーディング、ライブサポート、音楽制作をしています。相模原で音楽教室も運営していますので、お気軽にご連絡ください。

【局所性ジストニア】定位脳手術を受けるまで②

局所性ジストニア」を治すために、2016年に入院・手術をしました。

手術の内容・術後の経過など質問を受ける機会が多く、また、少しでも悩んでいる方の役に立てればと思い、書いています。

 

前回の記事はこちら

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【局所性ジストニア】定位脳手術を受けるまで① - ギタリストの日常

 

「局所性ジストニア」はざっくり言うと、こんな病気。

同じ動作を繰り返し行う「反復運動」によって、自分の意思とは関係なく身体が動いてしまう「不随意運動」を引き起こす神経回路が勝手に鍛えられ、正しい動きを自分の意思で制御できなくなる脳の疾患。

 

近年、多くのミュージシャンを悩ませている病気で、やむを得ず活動休止や引退される方もいます。

 

手術前日から手術直前まで

 

手術前日はさすがに眠れないだろうと思い、眠剤を処方してもらう。

 

眠剤を飲んでも眠れないか?ともやもやしながら過ごしていたら、いつの間にか寝落ちていて、気が付いたら朝だった。

 

目覚めはスッキリ!笑

 

僕の手術日は、手術が3件入っている内、定位脳手術が2件。

通常なら8時から開始のところ、僕は7時からのスタートだった。

 

朝6時前に体温、血圧検査。

前日受け取った手術着のワンピースに着替えたら、頭を手術台に固定するためのフレームを装着。

 

手術当日は1日頭の位置を変えられず、ベットから動けないとのこと。

 

前頭部・後頭部の前後各2カ所に局所麻酔の注射

この局所麻酔がなかなか痛い!

例えようのない痛みだった。。

 

そしてベッドに頭を固定。

 

ジストニアの権威である平孝臣先生チームの堀澤先生が、フレームの位置を慎重に決めていく。

場所が決まったらネジを回すが、これがまた痛い。

 

でも、この固定フレームは必須!

視床を焼いていくときに、頭の位置がズレたら非常に危険なのだそう。
視床の隣には足などの運動機能があるらしく、後遺症が出てしまう危険があるとのこと。

 

麻酔が効くまで2時間ほど待機。

この間にMRICTなど必要な検査を行う。

 

MRIとCTは悪さをしているジストニアのポイントを割り出すための大事な検査。

黒い影みたいに見えるらしい。

 

MRIはまわりの友人から苦手な人が多いと聞いていたが、自分はどうだろうと思う。

 

CTは時間にしたら5分程度で、すぐに終了。

MRIは途中で寝てしまった。

 

手術開始

 

9時55分頃。

手術室へ移動。

 

僕はエレキギターアコースティックギターも弾くので、2本持参。

ケースの置き方とか慎重に扱ってくれるのが嬉しい!


なぜ、アコギを持ってきたかというと、エレキよりも弦の張力があり、ジストニアの症状がかなり強く出るから。

 

手術室の雰囲気に若干怯みつつ、いよいよあの痛い思いをして付けた頭のフレームを手術台に固定。

 

固定度は、生唾を飲み込んでも微動だにしないほど。

頭は一切動かず、喉だけが動く感じ。

 

僕が手術台に乗り、準備が整った頃合いで自動ドアが開き、平先生が登場!!

 

もの凄い安心感。笑

 

平先生「白鳥さん、よろしくね!頑張りましょう!」

そう声をかけてくれたのが嬉しかった。

 

平先生がメスで切るポイントを慎重に探す。

そのポイントをバリカンで刈り、髪を洗う。

平先生はリラックスさせてくれようとしているのか、いろいろ話しかけてくれる。

 

平先生「今までジストニアのギタリストは沢山手術してきたけどベーシストはいなかったかも。ベーシストの人口は少ないの?」

僕「そんなことないですよ」

 

などの雑談をしているところに、麻酔。

 

やはり痛い!!!

 

まず、メスで頭皮を少し切る

 

「痛くないですか?」と聞かれ、少し痛いことを伝えると、麻酔の量を増やしてくれた。

局所麻酔なので痛みは消えるが、ジョリジョリと皮膚を切る感覚はある。汗

 

そして…ド リ ル で 穴 を 開 け て い く !



10〜15秒くらいかな。

痛くはないけど、本当に怖かった!

大切な部分を守っている頭蓋骨を突き破るのは怖い!

 

かなりの音だし、ドリルの勢いもけっこうある。

 

音が止まり、電極棒?のようなものを脳に刺し、悪さをしてるポイントを焼いているらしかった。

 

平先生「そろそろギター弾いてみましょう」とギターを渡される。

弾きにくかったフレーズを試しながら、平先生に伝える。

 

僕の場合、人差し指と中指はコントロールができたので、それについてもフレーズを弾いて先生に伝える。

 

症状が顕著に出るフレーズを弾く。

 

「そのまましばらく弾いていてください」と言われていたのでしばらく弾き続けると、ふっと力が入らなくなり、スムーズに指が動くようになる。

 

手術チームの先生も「見て分かるくらい動いてますね!」と話していた。

さらに弾きにくかったフレーズをいろいろ弾いてみる。

 

アコギに変えてコード弾きなども入念にチェック。

 

引き攣りや薬指・小指が指板に引っ張られる感覚が消えてる!

 

平先生「ここはどうかな?」

僕「こわばり、つっぱりが消えてます」

 

手術中に平先生やチームの方々が、こまめに「痺れはないですか?」「ぱぴぶぺぽって言ってみて?」など、声を掛けてくれるのが嬉しい。

 

その都度、「はい、大丈夫です」「ぱぴぷぺぽ」と伝える。

 

中指の引っ張りが残っている旨を伝え、トリル的なフレーズをしばらくやっていると、次第に安定してくる。

 

それを伝えると「うん、動いてるね。」と先生たち。

 

しかし、この後になんと!

 

左手・左足の順番に痺れが!

 

僕「先生!左手・左足が痺れてます!」

 

痺れは電気風呂に手を入れたときみたいな感覚。

 

平先生「ここまでにしましょう、やりすぎはよくないので」と終了。

 

堀澤先生が頭の穴をセラミックで塞ぎ、ホチキスで縫合。

 

ずっとカメラ撮影が入っていて、平先生がそのカメラを切るように伝える。

少しでもジストニアの研究の助けになれば本当に嬉しい。

 

術後から退院

 

術後は担架に乗ってMRI検査。

頭の出血があるとまずいので。

移動中に堀澤先生が「白鳥さん今までで一番、手術時間が短かったですよ。ポイントがすぐ見つけられたよ」と言っていた。

 

確かに、手術はトータル1時間半くらいと短かった。

 

今回の平先生チーム(平孝臣先生、堀澤先生、岡先生)本当にチームワークが素晴らしかったです。

先生たちに命を預けて良かった!

すごく不安だったので、一つ一つの行動を丁寧に説明しながら進めてくれるのは嬉しかったです。

 

退院まではたまに屋上でギターを弾き、あとは食べるか寝るかして過ごしました。

 

ミュージシャン仲間や友人たちが忙しい中お見舞いに来てくれました。

初の入院生活は結構暇で寂しいもので、本当に来てくれて嬉しかったです!!

 

約2週間入院して、退院。

 

その後も快気祝いなどに連れて行ってもらいました。

本当にありがとうございました!!

 

一時は、今後ギタリストとして厳しいかも、と真剣に悩みましたが、この症状がジストニアという病気だとわかり、手術を受けることができて本当に良かったです。

 

この手術は術後半年間、症状が再発しなければ、半永久的に効果は続くそうです。

 

お世話なっている制作チームやミュージシャンの方々には、本当に支えていただきました。

 

ジストニアのことを伝え、スケジュールなどでご迷惑をおかけした際も、逆にあたたかい励ましの声をいただいたりと、ただただ感謝です。

 

経過としては、1、2週間は指に力が入りにくく違和感が抜けませんでしたが、少しずつ感覚が戻ってきました。

 

1カ月後にはなんとか仕事に復帰できたし、ステージにも出演できました。

 

現在はというと、弾けば弾くほどできることが増えていきます。

これが本当に嬉しいんです。

 

そして2023年現在、ジストニアを発症していた頃の感覚も忘れてしまうほど、自由に演奏できています。

 

ジストニアで弾けなくなりつつあって悩んでいた僕を、同じ気持ちで励まし、支えてくれた家族や仲間に感謝を忘れずに、今後もいい作品を作り、いい音楽を奏でて、たくさんの人を感動させられる仕事を妥協なくやりきりたいです。

 

現在もジストニアの疑いがある方、手術を検討中の方、リハビリをされている方からご連絡をいただきます。

 

症状もさまざまですし、お伝えできることは少ないかもしれませんが、わかる範囲でお伝えできればと思います。

 

ジストニアかもしれないと悩んでいる方は、遠慮なく、気軽にご連絡ください!

 

 

退院後久しぶりに会った愛犬こはると。笑